No.124 全国に挑む後輩たち 5−2



全国に挑む後輩たち 5−2

5、春日部高校陸上部として 中学チャンピオンが進学後に伸び悩むのは珍しくない。冬季を越えて 体調管理が及ばないことや、まったく違う環境に入って集中できない ことなど多々あろうかと思う。 ほかの高校の方針はもちろん分からないのだが、春日部高校生の気風、 やり方、性格を熟知している指導者がいるのでなんら心配はない。 まさか、分別ないほどのうぬぼれやさんは入学してこないだろうから大丈夫だ。 10秒88という記録から察するものとは異なって、後藤の身体は まだ幼い。筋骨隆々としているわけでもなく、がむしゃらに 走りこんだ結果でもない。まあ15歳で100m10秒台に達するの だから、神経筋単位がすぐれた(筋肉を収縮させる神経が密である こと。強く早い筋収縮が可能であること・・)身体であるのは もちろんだが。 後藤を育てた中学恩師は、先を見越した育成をなさったのであろう。 200mのための走りこみや筋力トレーニングは一切させていない。 あくまで基本動作(・・・としか書けないが。うまく言えないので) を徹底して、その後の段階は高校の監督にゆだねるお考えらしい。 じつにお見事な選手管理だと思う。 その中学恩師は目先のこと(・・・といっても全国制覇したのだが) よりも、その選手がその後大きく成長し、大人になって本当の開花 できるようにと考えておられたのだろう。 教え子と、陸上とに深い愛情を持っている方なのだと思う。 その辺りの事情も大塚監督は掌握しているので、引継ぎもうまく いったのだろう。環境もトレーニング方法も後藤にあっているようだ。 (彼の兄貴も同窓) したがって後藤はまったく体力作りをしていないで入学してきた。 持久力も筋力も15歳の一般学生並みである。4月の東部地区に 出せばそれなりには走れるのだろうが、あわてて大器を壊したら 取り返しがつかない。 ・ ・・「昨年の中学チャンピオンはどうした?」・・・という世間の 声もあったろうが、大塚監督は決めていた。「後藤は国体で使う」。 6、地元国体 入学後の後藤の確実な成長は「全国に・・」シリーズで紹介したので、 省略する。10秒70にまで記録を更新し、危なげなく国体予選を 自己新記録連発で勝ち抜いた。 今回は常に向かい風の熊谷会場であった。22秒26で予選4位。 4位で冷やりとしたが最終的に通過したのは22秒7台までなので 余裕はある。準決勝は22秒06の自己新記録でトップ通過。 調子は良い様子。 いよいよ決勝は22秒11の自己2番目の記録で4位入賞。 後半追い上げ3位とはわずか30センチと惜しい4位であった。 後のJr五輪も含めて、このファイナルのメンバーが、来年の千葉 インターハイの準決勝にそろうだろう。同級生たちは確実に意識して いる。「後藤と同じ組だ。」「後藤が3位だ」・・・みな中学選手権の 覇者がどんな走りをするのか、興味津々のはず。 2004第59回国民体育大会(秋季国体) 競技結果一覧 【陸上競技】 ◆少年男子B 200m 【熊谷スポーツ文化公園陸上競技場】 決勝 10月25日 順位 選手名 県名 所属 記録 1 黒川 哲雄 新潟 新潟明訓高 21秒48 2 安孫子 充裕 山形 上山明新館高 21秒93 3 熊本 貴史 東京 早実高 22秒07 4 後藤 乃毅 埼玉 春日部高 22秒11 2004.10.29-10.31 ジュニアオリンピック/男子 第35回ジュニアオリンピック全成績 【2004年10月29日〜31日:神奈川県横浜市・横浜国際総合競技場】 《 男 子 》 ■ Aクラス(高校1年生)■ ★★★★ 100m ◎◎◎◎ 決 勝<30日>(−1.4) 1) 10.88 熊本 貴史 (早実高 1東京) =大会新 2) 10.96 黒川 哲雄 (新潟明訓高 1新潟) =大会新 3) 11.00 後藤 乃毅 (春日部高 1埼玉) =大会新 4) 11.04 野口 修平 (荏田高 1神奈) 5) 11.16 安孫子充裕 (上山明新館高1山形) 6) 11.22 今瀬 達大 (関商工高 1岐阜) 7) 11.23 荒尾 将吾 (小倉工高 1福岡) 8) 11.34 知花 豊 (中部商高 1沖縄) 7、総括 現役諸君へ 全国に挑む後輩たち・・・これは誰を指すのか。 読んでいる現役がいるなら考えて欲しい。 「自分は奥岡や後藤みたいに強くないし・・・」「インターハイには 関係ないし・・」・・・さにあらず!確かに個人競技能力に差が生まれ るのは仕方のないことだ。かといって、あきらめてよいはずはない。 みんな競技歴はたったの4〜5年であり、何より学生諸君らは無限の 可能性を秘めた16〜17歳なのだから。 この冬、大塚監督のメニューで頑張って練習すれば、大幅な成長は 確実なのだ。ビギナーなら400mで4秒くらい短縮だって夢では ない。たとえば先の埼玉国体で45秒89の超高校記録をマーク した金丸選手(大阪高校)。試合前、彼のベストは46秒96。 そんな記録を持つ一流選手の彼であっても、たった半年で1秒もの 短縮を見せたのだ。 「自己ベスト」を目指すことこそ大切なのである。人によって目標は インターハイのファイナルであったり、東部大会の表彰台であったり、 様々でよい。そして全員が頑張る「良いチーム」を作ることだ。 全員がインターハイまでたどり着けないかも知れないが、個々が ベストを尽くせばよい。その雰囲気が、全国で勝ち抜く仲間にも 大きな力になるのは間違いない。 私の同級生には短距離と投擲で優秀な選手がそろった。 恩師・小原監督は、全国総合優勝を狙うぞ!と言った。夢を持って みんな頑張った。走ることが嫌いで怠け者の私も、恥ずかしながら 高2の冬だけは頑張った。人生で一番苦しい練習をしたといってよい。 なぜあんなに頑張れたのか不思議なくらいだ。 もちろん県大会、関東大会、全国と進めるのは限られてしまうのだが、 2年次の名古屋インターハイ、3年次には秋田インターハイに連れて 行ってもらえた。仲間の活躍で総合5位を獲得し、賞状ももらいに いけた。全員で勝ち取った総合成績なのだ。夢中で陸上部活動に どっぷりつかった3年間だった。強いといわれたことはなかったが、 一生懸命やったから実に楽しい高校生活だった。 「全国に挑む後輩たち」・・・これはチーム全員の事を指すのは いうまでもない。 37回 野本順一 <<前へ 次へ>>