No.125 インフルエンザについて



インフルエンザについて

後輩シリーズもよいが、(同窓にしか受けないので・・・)メディカルな記事も 書かなければならないと思う今日この頃。 毎年猛威をふるい甚大な被害を及ぼしたインフルエンザ。 我々歯科の分野まで、患者への投薬の注意、麻酔の注意などが叫ばれた。 単純な話だが、風邪と何が違うのか?対応は?・・・・ ★「スペイン風邪」の恐怖 1918年3月頃、第一次大戦の最中にあったアメリカ軍の兵営で発生したのが、 通称スペイン風邪である。発生すると同時に、戦場で爆発的に拡大した。 衛生状態の悪さ、栄養状態の悪化で、ケガや疲労により、激しい流行と 被害を引き起こす戦場は格好の繁殖地といえた。 4月にフランス全土を覆い、まもなくスペインへと。6月、欧州大陸から英国へと 渡り猛威を振るった。このため、スペイン風邪という呼称が生まれた。 同じ頃、中国、インドでも発生。日本海軍での患者の出現もほぼ同じだった。 当時は細菌よりはるかに小さい「ヴィールス」を理解していなかったため、 打つ手無し状態が続き、対応が遅れ流行が終わるのを待つのみとなった。 全世界でこのインフルエンザによる死者は、2500万人!にのぼり、 この結果、戦争終結に及んだともいわれている。 日本での感染者は2000数百万人、死者は38万人。 ★風邪とのちがい━━━━━━━━━━━━━━━━━ 一般的な風邪の30−50%は人ライノウイルス(human rhinovirus:HRV)で 感染すると言われています。 ライノウイルスとかコロナウイルス、エンテロウイルスアデノウイルスなどが有名。 多くは飛沫感染(空気中飛来、くしゃみで風邪が移る)、鼻腔や上気道にくっついて 繁殖。ライノウイルスの場合、全身症状が軽く、発熱は37度台であることが多い。 アデノウイルスの場合は、ライノウイルスとかコロナウイルスに比べて鼻咽頭喉頭 のほか、下気道感染に移行することがある。結膜炎になることもある。 エンテロウイルスは、夏かぜで有名。ウイルスが食道を通って腸に達すると、 下痢になる。 ★抗生物質は?━━━━━━━━━━━━━━━━━ ウイルスは細菌にくらべはるかに小さい。構造が全く異なる。 抗生物質は細菌のタンパク合成や細胞壁合成を阻害する効果をもつ。 したがって細菌をやっつける抗生物質を飲んでもウイルスには効果はない。 ではなぜ処方されるのか? 一時的に気道の粘膜が炎症を起こし、そのため、二次的に細菌などによる感染を 起こしやすくなる。気管支炎、肺炎、副鼻腔炎、中耳炎などになることがある 場合には、抗生物質が使われる。 つまり二次感染の対応薬といってよい。 ★インフルエンザの症状━━━━━━━━━━━━━━━━━ インフルエンザの場合は39℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身の 症状が強く、あわせて普通のかぜと同様の、のどの痛み、鼻汁などの症状も 見られる。更に、気管支炎、肺炎、小児では中耳炎、熱性けいれんなどを併発し、 重症化することがあるのもインフルエンザの特徴。 さらにインフルエンザは流行が始まると、短期間に乳幼児から高齢者まで 膨大な数の人を巻き込むという点も特異的であるといえる。 ★対応と予防━━━━━━━━━━━━━━━━━ インフルエンザウイルスは気温20度、湿度20%くらいが繁殖しやすいと いわれている。したがって、加湿、暖房は必至である。 抵抗力にも大きく左右されるので不眠、疲労、偏食は当然避けねばならない。 体力の低い幼児や高齢者が死に至る事があるのは、そのためである。 水分摂取も必要であるが、アルコール飲料で・・・というのは大きな勘違いである。 利尿作用によって多くの水分が排せつされてしまう。発汗以上に排尿が多いのだ。 「のどをお酒で消毒だ」・・・なんて愚の骨頂である。 たかが5から10%のアルコール飲料では、何の殺菌効果もないのは言うまでもない。 枕元で寝酒をしながら眠る・・・これも不衛生である。 アルコール自体が糖質であるため、口腔(こうくう)内や咽頭の粘膜に付いた細菌が 繁殖してしまうためだ。 ★医師に処方を━━━━━━━━━━━━━━━━━ 対インフルエンザは結局のところ、医師の診察を受けるのが一番である。 素人知識で、「卵酒でものんであったかくすれば・・」なんて、意味がない。 インフルエンザは処置が遅れて悪化すれば死をまねく。 風邪との違いも医院での検査がなければ判断できないはずである。 昔残っていた風邪薬を飲んで・・・というのも危険だ。 解熱剤によって脳症になってしまう場合もある。 一般には感冒薬しか販売されないので、細菌やウイルスには何の効果ももたない。 つまり市販解熱剤も私用は禁忌。人間が発熱するのは、防御反応の現れである。 発熱によって体内の菌を殺すのが目的とされている。 なんでもかんでも「熱を下げて・・・」に結び付けてはいけないのだ。 したがって薬の作用を目的別に理解していない一般患者が、時期を見誤っての 市販薬の服用は命取りになるおそれがある。とくに小児にはこの傾向が強い。 特効薬として、現在は抗ウイルス薬(タミフルなど)もある。 インフルエンザウイルスは症状発現の24時間前から急速に増加し, 症状発現後48時間以内に増殖のピークに達する。 従って,タミフルの投与開始は症状の発現が48時間以内の早期である場合に限る。 医師の診断にまかせるしかないだろう。 ★ワクチンは?━━━━━━━━━━━━━━━━━ WHOが推奨した株を基本にして日本のインフルエンザワクチンは、作られている。 この10年間、予測と流行したウイルス株はほぼ一致しており、有効なワクチンが 作られているのが実情。抗原に対応する抗体を持つため予防接種を受けていれば、 インフルエンザにかからずにすむか、かかっても軽症ですむ。 特に高齢者の場合は、インフルエンザによる入院・死亡を減らすことからも 非常に有効である。高熱や、嘔吐は著しく体力を消耗するからだ。 ちなみに「超音波加湿器」は水の雑菌が繁殖する恐れがあるので×。 低音では、湿気のあるお風呂場に「カビ」が生えるのと同じである。 スチーム式が○。100度を超える蒸気なら一般的な菌は生きられないから。 同時に部屋のそうじ(ほこり)と、たまに窓を開けての換気も重要なファクターである。 ★今後の見通し ヴィールスは驚くほど、変化、変態が早く、適応が強い。 したがって時間の経過とともに多種多様化するのは避けられない。 また日本では空気が乾燥した冬が「インフルエンザシーズン」と思われがちだが、 さにあらず。たとえば高温多湿のアジアでも、夏場でさえ鳥インフルエンザでの 死亡例は多い。 ようは自らのコンディション「自己免疫」が最重要であるということになろう。 筆 スチーム式加湿器が好きな のもと歯科 <<前へ 次へ>>