No.157 赤き疾風完結1  きらめきの中 魂の走り


★ OBの悲願 監督の思い やはり大阪は暑かった。 関東の気温からして、もしや涼しいのでは・・・ という甘い予想を覆す暑さであった。 過去、高校時代二回、卒後三回応援に行ったインターハイは、 いずれも「うだるような」暑さであった。 私は「晴れ男」なので、森丘、鳥海(高40)のような 降雨気温16度(ウインドブレイカーを着用)の北海道インターハイ、 台風の沖縄国体のようなことは一度もない。 そして私は縁起の良い男のようで、見に行く試合はたいてい入賞している。 私の経験など、どうでもよい。 今回は大きな節目の年。 インターミドルからインターハイに代わって59年、 我が春日部高校陸上部はついにその歴史的瞬間を迎えている。 傷つきながら獅子奮迅のごとき活躍をした我々の若き子供たち。 それを指導し開花させた大塚監督の奮闘。 応援してきたOB 800人の想いを込めたインターハイを迎えているのだ。 ★ 日本ジュニアの喜びと不安 7月に吉報が舞い込んだ。 日本ジュニアで後藤はついに二年半ぶりに、全国チャンプに返り咲いたのだ。 北海道全中の優勝以来である。 春高にとっても、瀬上の奈良国体(1984)以来の全国制覇。 インターハイの前哨戦として、日本陸連が開催するこの試合は 世界ジュニア選手権の選考レースでもあった。 向かい風3.6mのなかライバルの熊本選手(早実)や、 野口選手(荏田)、昨年の覇者・木村選手(早大)にも勝った。 風が男子100mだけ悪すぎて、記録が伸び悩んだため、 トップニュースにはならなかったが、様々なファクターを得られたと思う。 昨年のインターハイもそうだったが、後藤は向かい風のレースが多い。 特に今年は、ほとんどが強い向かい風である。 大塚監督に「向かい風に強いですね」というと 「ちーがうよ、向かい風に強いんじゃあなくて、主要なレースがみな 向かい風だっただけだよ。」との事。 記録は気象環境の影響によるのだが、勝負には負けていないことが 重要だという。なるほど、今年の後藤は誰にも先着を許してはいない。 県、関東、日本ジュニアに勝ったものの、共通して風が悪かったのだ。 そのためランキングは5位くらいだが、 明らかに昨年よりも速くなっているのは間違いない。 私なりに考えた。風やら雨やらの悪条件下でめっぽう強い後藤は、 やはり実力がぐんとアップしているのだと思う。 テクニックを詳しくは分からないのだが、 細々したポイント全てに技術向上が伺えた。 さすがに3年間も短距離陣を見ていると、 素人の私でさえ後藤のフォームの安定度は図抜けているのがわかる。 頭も上体もまったく「ぶれ」ていない。 インターハイの決勝レベルレースでさえ、他の選手に比べ 後藤のロスのないフォームは際立っていると思った。 モーリスグリーンのごとく、100mをいくつかの局面に 分けた走法をしているように見える。 おそらく昨年の岡山国体での10秒67、7位という結果が、 今年の彼と大塚さんのトレーニングに生きているのだろう。 「前半なら、日本代表クラス」と言わしめる超高校級のロケットスタートだ。 しかし、インターハイ一週間前の埼玉県東部大会で 私の中には不安材料があった。 後藤がハムストリング(大腿部の裏側の筋肉)を傷めたらしいのだ。 私があわてても仕方ないのだが、整形外科の友人に 肉離れの対処療法を個人的に聞いてみたりもした。 不安で向かえた8月。 しかし大阪からの速報に驚いた。 つづく

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