No.156 赤き疾風 満身創痍  雨中の後輩達-3


★無償の愛 数年前、春高野球部が快進撃し(現在も安定して好成績を残している)、 特に好成績を残した年があった。 そのとき、嵯峨根先輩は応援に通い、ある事にインスパイアされたという。 もしや甲子園・・・という可能性も、残念ながら あとわずかで途絶えてしまった最後の試合、 ある光景を目の当たりにした。 善戦したが試合に敗れた春高ナインは、なかなか球場から出てこない。 帰り道を何百人のOB、父兄が迎えていた。 みながいっせいに叫んだ。 「胸をはれーっ」 「お前達はよくやったぞーっ」 「何を恥じる必要がある!お前達は強かった。がんばったぞーっ!」 その声援に、やがて高校球児達は、やっと姿を現した。 選手も応援団も号泣であったという。 説明は不要。 これが、ファン、応援者というものではなかろうか? 「見返りを求めない、無償の愛」 ・・・これが春高の後輩に対するOBの共通見解であると私は確信している。 競技場で顔があえば「ちわーっす」と、高校生らしく 戸惑いながら挨拶してくれるだけでいい。 これがこの二年、ほとんどの試合を見届けた私の感想である。 ★ 他県立高校の「同志」 関東の200m決勝の際、私と中山(49回)は ゴールの先で写真撮影のために雨中でカメラを構えていた。 するとある白髪の紳士に声をかけられた。 「いやあ、春日部、すごいじゃあないですか!3人決勝残るなんて!」 同じキャノンを持ったその方は  名門 神奈川県立・希望が丘高校の陸上部OBでいらっしゃるという。 インターハイ優勝者も輩出する、いうまでもない神奈川の古豪である。 私の「埼玉 春日部高校 陸上部」のポロシャツを見て 話かけてきてくださったそうだ。 (私はこれみよがしにシャツを着るようにしている。 少年達に「あ、しらないおじさんだけどOBが来てる」と思わせたいからだ。) 紳士は「その後、私は埼玉大学に進学しましたから、 埼玉県は第二の故郷なんです」 またお話する中で、「神奈川も学区がなくなって、 これで全国的に県立高校の復活が叫ばれています。 微力ながら私らもOB会で後輩を応援しているんです。」 とも言っておられた。 県は違えど、陸上部の男同士の話であった。 ★ 大阪の夏へ さあ、石川、田中、後藤、後輩の山崎の布陣は あと一ヵ月半で最終局面を迎える。 みな、心情は様々であろう。 しかし、順風満帆で来ていたら本番で足元をすくわれているかも知れない。 奥岡の二年生のときの病気もよい経験になって、 最終学年でファイナリストを達成している。 したがってここまでの経験を、前向きに、プラスに捉えて生かしてほしい。 このあとの40日、自分は何を考えどういうことをやるべきなのか。 ・ ・・私が言うまでも無く、監督はそれの思考チェンジに 取り掛かっていることであろう。 いずれにせよ、全関東勢に「赤シャツ」のインパクトを 強烈に与えたことは明らかである。 特に南関東の短距離の猛者たちにも、鮮烈な記憶を植え付けたはず。 あとは8月の本戦を、「泰然自若」の精神で迎えてほしい。 3年も「赤き疾風」を書いていると、 もはや「親の気持ち」になってきてしまっている ・ ・・・書き終えてそう感じてしまう6月の後記であった。 37回 のもと

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