No.116

No.116 全国に挑む後輩たち！２００４年インターハイに向けて

全国に挑む後輩たち！２００４年インターハイに向けて

現在２００４年７月３1日である。来週は島根インターハイだ。 ★高校日本一へ１１０ｍH、４００ｍHで奥岡が出場する。まだ２年生だ。しかしれっきとした新・春高記録保持者である。先日の大会でついに待望の１１０ｍ H１４秒台へ踏み込んだのである。今日、大塚監督から診療室に電話があった。「奥岡が復調してきたよ。１４秒９９で走った。後藤も調子が上がってきた。１０秒８４が出たよ」・・・！ ★苦難今年のインターハイへの切符を手にしたのは、２年生の奥岡選手である。県大会で両ハードルを制した。４００ｍHは５３秒５台をマークし、昨年の自己記録を２秒以上更新した。インターハイのセミファイナルレベルの記録である。奥岡は全日本中学８位の戦跡を持つ。Jrハードルで１４秒台をマークしたのである。私の見識では、本番で戦える選手は舞台を変えても同じである。棒高の斉藤達哉（５３回）は全中３位、インターハイ６位、Jr五輪でも入賞している。やはり他と一線を画す勝負強さを備える。しかし今年の奥岡には試練が待っていた。インターハイ本戦は数日後なので、あえて今言っておこう。奥岡は最近まで内臓疾患で自宅療養していたのだ。関東大会の途中、体調を崩し高熱、最終日にはぐったりであったのだ。その後、自宅療養することになる。・・・・別段、不摂生をしたのでもなく、偶発的な事だからどうしようもない。監督は苦悩した。「２種目棄権もありうるかな・・・」・・・さまざまな雑務に追われ、毎週末を競技にささげ、やっと「幹」ができてきた矢先の障害である。せっかくの大器を目先の帳尻で壊すわけにはいかない。 ★経験とは？私と４００ｍHは１００％無縁の競技だが、直前に練習再開してインターハイで何とかなる・・・？・・・そんな事は無いだろう。それくらいは分かる。しかし絶望かと思われた高校総体だが一筋の光明が差し込んだ。数週間前まで入院していた選手が１１０ｍHで自己新記録をマークしたのだ。やはりただ者ではないのか。そういえば関東大会も最悪の体調の中、しっかり最終日も１１０ｍＨは２位で余裕の通過。関東の時点で棄権も考えるほど体調不良であった。いずれにせよ来年を見据えたよい経験になるだろう。たとえば、インターハイ決勝の選手全員が「絶好調」で向かえるはずは無い。けがや病気、環境の悪化など様々なハンデをい背負っているはずだ。ある有名選手が言っていた事を思い出す。逆境をエネルギーに変えるくらいでなければだめだと。ちょっと自分に不利な境遇に出会うとめげてしまうようでは、しょせん勝者にはなれない。ハンデを負うほどに燃えるくらいでなければ本当の勝負で勝てるはずがない。決勝に進んできて、万全のコンディション、五体満足なやつはいないんだから・・・と。私ら凡人には極めて耳の痛い話だが、五輪のチャンピオンクラスの選手の多くは同じ趣旨の経験を語っているのも事実。 ★総合の夢！これが掲載されるのはおそらくインターハイ後なので、奥岡にプレッシャーが及ぶ心配は無い。従って来年の大きなビジョン（あくまで私的）を語ろう。つまり「全国総合入賞！」である。春高がもっとも最近に総合入賞したのは、かくいう我々の３７回（１９８４年秋田インターハイ）である。総合５位として表彰式に参列できたことは、私なんぞからすれば奇跡的幸運。一生の思い出だ。幾多の激戦を繰り広げてきた先輩たちが言っておられた。「総合はねえ、県や関東で総合優勝したから全国も・・・なんて甘い考えだよ。ようは何人インターハイに駒を進めたかでなく、全国で点を取れる選手が何人いるかで決まる。したがって大人数は必要ないんだ。」確かにそうだ。瀬上祐司ひとりが取った点数は東部、県、関東がすべて１２点。全国で１０点である。名門とされる高校でさえ、10数人体制で５～６点しか獲得できないのが普通なのである。もちろん勝ち抜いて関東で６位入賞を果たし、全国へ進めたとしたら素晴らしいことであるのは言うまでもない。あくまで総合入賞のビジョンについてであるが。１年の後藤が早々に昨年の自己記録（１０秒８８・中学ランク２位）を更新してきた。彼は同時に全中の覇者でもある。来年は後藤の１００ｍ、そして奥岡を入れた両リレー、奥岡個人の両ハードル・・・そう考えると可能性は高い。トラック部門はなおさら可能性がある。 ★御大の経験私らが勝手に盛り上がる中、御大・関根監督が言った。「大塚先生、よくばっちゃだめだよ。よくばっちゃ。はは・・」・・・と。「いやあインターハイはね、県や関東とはわけが違う。総合が欲しくて、ついついフルエントリーしてしまうんだ。普通は。でもその結果は良くなかったねえ。加藤さん（高３回）も全種目インターハイ表彰を狙ったがハンマーの６位にとどまった。後藤くん（高５回）だって欲張って２００ｍにも出場させたから円盤がだめだった。疲れちゃったんだよ。（砲丸は勝ったが）本来、３種目は無理だ。ひとつ捨てればいいんだが、人間は欲があるからそうもいかない。みんな欲しくなるんだな、これが。いやあ私の采配ミスだよ・・・。」第３回関東高校対抗選手権大会（昭和25年） 110H ③ 16.4 小川　　昇砲丸投 ③ 12.26 加藤　　功円盤投 ① 37.86 加藤　　功保投 ① 38.21 加藤　　功第３回全国高校対抗選手権大会　　保投 ⑥ 加藤　　功さらに関根監督は言う。「その教訓があって大木伸夫（高１３回）は幅、三段の2冠が取れたんだ。４Ｘ２００ｍＲも入賞圏内だったが、あえてメンバーから外した。悩んだよ。だって大木は4種目表彰台ねらえたんだから。（幅、三段、１１０ｍＨ，リレー）」「インターハイで欲張ってはいけない」・・・幾多の修羅場、勝負を乗り越えてきた名将の、経験に基づいた究極の真理である。優勝候補と目されながらも、一度として学校対抗全国制覇には至っていない。春高は総合入賞も、フィールド優勝もある。しかし総合杯はない。インターハイ累積1３０点を越えるが、一回に20数点獲得しなければ勝てない世界なのだ。総合を考えると少しでも点が欲しい。しかし複数入賞が狙えるかもしれない選手がいても、確実に絞って集中させるしかない・・・。いずれにせよ来年は千葉インターハイ。おそらく多くの人数が参加することとなろう。我々にできるのは余計な冷やかしを入れず、じっと結果を受け入れるしかないだろう。筆　のもと歯科クリニック　　野本　順一 <<前へ次へ>>