No.121 全国に挑む後輩たち 3



全国に挑む後輩たち 3

★県新人大会にて 高校アスリートの夢はインターハイである事はいうまでもない。球児が甲子園に夢を 馳せるように。しかも来年は隣県の千葉インターハイでもあることに運命も感じる。 そう、春高・大塚軍団が千葉インターハイで「紅いユニフォーム旋風」を巻き起こす 野望があるのだ。 その前哨戦でもある県大会。いかに優れたランキングにあろうと、埼玉の難関を勝ち 抜かねば先はない。全国での入賞を期待されながら、県大会、関東大会で不運に見舞 われる選手は数多い。我が高校でも数知れぬほどの選手が涙を飲んできたのだ。 従ってインターハイで・・・という前に、県大会でしっかりとした成績を確実に残せ なければならない。標準記録で全国大会に進める中学生とはまったく違うのだ。そう いう意味合いから、春の本番前の「新人戦」は重要なのである。 ★最終日 日本体育協会に属し、日本代表を多々観察してきた森丘氏(40回)とともに、上尾 に脚を運んだ。森丘自身も1600mRで北海道インターハイに出場し、関東では3 分17秒の現在でも通用する好記録をマークしたキャプテンである。そして同期の鳥 海 浩が400mHで6位入賞を果たした。その教えを受けた後輩の塩川は、翌年の 兵庫インターハイで3位、埼玉県高校新記録の47秒63をマークした。(そのとき の優勝は46秒27の高校新記録で渡辺高博。のちにバルセロナ代表。あの為末 大 が8年後に破る) 森丘は県の新人大会で400mH4位に。この段階で関東ランキングでも6位に位置 し、当然来年の個人種目のインターハイ出場を狙っていたのである。しかしシーズン 直前に捻挫し、400mHでの個人全国への夢は絶たれた苦い経験も持つのだ。従っ て森丘は新人戦に人一倍強いこだわりを持っている。・・・そう!秋の新人戦がどう であろうと、春の県大会を勝たなければ何の意味も持たない事を知っているのだ。 副会長の嵯峨根さん(32回)が初日のリポートをしてくださったので、後藤の10 0m制覇は知ることができた。向風0,7mで10秒95.2位には0,16秒差で 確実な着差があった。大塚監督が初日の夜、試合経過を伝えに医院に赴いて下さった のでより詳細を知ることができた。 ちなみの母校の県大会100m制覇はいったいいつ以来なのか?・・・元・三郷高校 陸上部監督を務め、県大会総合優勝を果たした名将・駒崎 秀雄先輩は語った。 「うーん、金子さん以来じゃあないかなあ・・・」。11"0 の春高記録を20年保持 した兼子 義明さん(昭和34年)ではないかと・・・ 我々陸上OBにとって記録は大事な歴史であるので、私的に調べさせていただいた。母 校が100mに勝ったのは、おそらく昭和37年の梶 先輩以来である。(あの大木 伸男さんの1年後輩にあたり、2年連続幅跳びインターハイ出場。教員時代には幅跳 び7m52で国体制覇) <>昭和37年度学徒総合体育大会 100  1位 11.5 梶  博信 第15回関東高校対抗選手権大会(昭和37年) 100  1位 11.4 梶  博信 ちなみに同年のインターハイ 第15回全国高校対抗選手権大会(昭和37年) 棒高跳  6位 3.70 田村  昂 第35回関東選手権大会 100  1位 11.5 梶  博信 ★故障者も 短距離では後藤に次ぐ走力を誇る伊藤裕一郎が、なんと県大会を前に内転筋の肉離れ を起こしてしまった!スピードもあり幅跳びでも7mジャンパーか!・・・と個人的 に期待していたのだが、膝に痛みもかかえていたらしい。個人ベスト100m11秒 19,200m22秒45の優れたスピードを持ち、もちろん両リレーの中核であ る。 伊藤の故障でここで大きく遅れてしまうかと思いきや、今年の我がチームは違う。1 1秒前半で6人そろえられるのだ。伊藤を温存したメンバーで臨んだ400mRは準 決勝も2位通過した。42秒5台で走れるのだ。伊藤の故障は、ハムストリングでは ないので、決勝だけなら行けるとふんだ監督は伊藤をアンカーに投入。 決勝は埼玉栄についで2位でゴール!好位置を獲得した。 後藤、奥岡、高橋大、伊藤で42秒34。 これはチーム新記録につながった。今は国体の予行で後藤を1走に配しているが、本 来彼をアンカーに据えておけば、現在のメンバーでも41秒台に届くと思われる。後 藤の1走ではスピードがありすぎて2走に追いついてしまうため、速度が緩んでしま うのだ。まあ記録更新はベストメンバーで臨む、関東選抜(10月16日〜)にでも 期待するとしよう。 ★入賞は 夏に嘔吐下痢を起こした奥岡はやっと戦線復帰した。110mH春高新記録の14秒 95で昨年に続いて優勝。しかしまだまだ完全復調には程遠いと、監督は言う。とく にスタミナがまったく不足して、400mHでは非常に不安を残すレース運びとなっ た。結果、54秒83で辛くも優勝できたのだが課題は多い。(後述) 200mは国体を控えた後藤が堂々の優勝。100m200m2冠は極めてまれだ。 やっと筋力がついてきたとはいえ、後藤の身体はまだまだ未熟。体重も60キロ ちょっとの体格には、降雨低温、向かい風1,4mは少々きつい。 1600mRは奥岡を準決勝まで控えさせて、3位通過で決勝にのぞんだ。雨脚はど んどん激しくなり、気温は下がり続けた。 石川、伊藤、高橋大、奥岡で3分25秒68の3位。 優勝の埼玉栄でさえ3分24秒台であるから気象条件の悪さが際立つ。本来ならもう 4秒くらいは早い記録が出るはず。我がチームのそれぞれのラップも準決勝より低下 している。 ★総合3位 100m200m110mH400mH優勝、400mR準優勝、1600mR3位。計45 点で総合3位。これは県大会において我が高校としては、近来まれにみる好成績であ る。大塚軍団は3年半でここまでの地盤を築き上げた。見事だ。ただ「前哨戦」なの で手放しで喜んでいられない。あえて、トータルで辛口考察する必要がある。 ・本番は来年の8月である。この大会は通過点。好結果をモチベーションとだけとら えたほうがよい。 ・記録的には全国20傑程度を目標にせねばならない。現状ではどの種目も全国入賞 はできない。 ・今年のように不意の病、ケガ、の経験を来年に生かした精神、身体を構えねばなら ない。(来年も万全で臨めるとは限らない。ハプニングは必ずあると覚悟せねば、本 番で戦えない) ・どの試合も甘えてはいけない。 (以下、森丘氏が感じ、心配する事) つまり、スパイクを忘れたり、準決勝あたりで油断したレースをしてはならない。雨 や、コース位置の環境因子で集中力が変化してはならない。アップは確実に、足あわ せやシミュレーションをきちんと持ってレースをしなければいけない。まあ、なんと なく・・・という印象を受けたという。つまり「県大会だから」「新人戦だから」・ ・・という気持ちがあるのではないのか・・・インターハイを狙う以上、どんなレー スも横綱相撲をしてほしい。目標記録を立て、結果との比較、解析をきちんとしなけ ればいけない。(日本代表レベルは全員がそういうスタンスでずっと戦っているそう だ)ちょっとうっかりしても何とかなる・・・という事は次からはない。今後ラウン ドが進むほど勝ち抜いた実力者しか残ってこないのだから。 選手諸君は春高生なのだから、それぐらいのことは監督に言わせてはいけない。 実際にインターハイの結果はどうなるかは分からない。入賞どころか、出場ゼロだっ て陸上は起こりうるのだ。しかし、それぞれのベストを後輩諸君が尽くしきったであ ろう来年8月に、はじめて「おつかれさま。よく頑張ってきたね。」という万感の言 葉でまとめたい。願いかなわず、夢がついえた多くの選手を見てきた我々が浮かれて はいけないのだ。 筆 のもと歯科 <<前へ 次へ>>