No.128 全国に挑む後輩たち 6−2東部制覇が示すもの



全国に挑む後輩たち 6−2東部制覇が示すもの

★ 三日目 私は午前中、クリニックで事務をしていた。「何時に終わるかなあ・・・しらこばと 競技場に間に合うかな・・・」突然嵯峨根さんからメール。「奥岡が14秒65!」と ・・・14秒6台といえばインターハイ、国体で確実に中盤に入賞可能な「当確」記録 だ。風も+1.5m。4月の現段階でなら、全国ランク5位以内は確実だろう。監督が 言うところ「早い動き、キレ」が備わったという。これで通算して3回の14秒台。非 常に安定している。まずは県、関東と確実にラウンドを進んで欲しい。 小柳も8位入賞をはたし、貴重な1点を獲得した。 三段跳びでは、幅跳びに続いて高橋が追い風2mに乗って4位。槍も手塚が5位で フィールドも確実に追加得点をはたした。 さていよいよ200m決勝だ。この時点で東校との差は9点。 スタンドで斉藤先輩(高五回)がご夫婦で応援に駆けつけてくれていた。前日には斉 藤先輩と同期の後藤前会長も応援に。嵯峨根さんと、私とみんなでスタンドに陣取っ て200mスタートを待った。その後ろでは現役選手が一丸となって「かすこーファ イトー!!」と声を合わせている。最高の盛り上がりである。 差「ひょっとしたら独占かもよ!」 野「ええっ、すげえ!アメリカみたい(?)」 斉「たとえ東部でも1,2,3位独占は極めて珍しいぞ。わしらの頃でもそうはない ぞ」 野「マジですか!」 差「奥谷さんの時の400mは独占だったと思うよ。だってあの時はさあ・・」 野「ああ、あの時!あのマイルは惜しかったですよねえ・・」 斉「・・・えっ!そんな事があったの?!」 ・・・という高校時代から何の進展も無い「OBらしい基本会話」を繰り返しつつ、2 00mスタート地点 を眺める。赤シャツと、紫シャツが3人ずつ並んでいる。スタート一閃!伊藤がい い。後半自信がある伊藤は直線に入った時点でトップ。すぐ後ろを後藤が追う!本 来、後藤は先行逃げ切りタイプだから、今回は伊藤がトップを守るのか!?(まあ どっちが勝ってもいいんだが、ころばないでくれ!・・石川もいいっ!)しかしここ から後藤の追い込みが爆発!すっと伊藤をかわすと、そのままリードを保った。二人 のトップ争いは最後まで続いた結果、後藤がわずかに先着し「0,09秒」の僅差で 優勝を決めた。やはり後藤は勝負強い!それより私らは、混戦の3位争いを石川がう まく制し、ゴールラインを駆け抜けたことに目を奪われた。このあたりが「チームの 勢い」を象徴しているとも感じた。風は+3.1mとあったが、記録からしてコー ナーは巻いていたのかもしれない。後にスタンドで伊藤に会ったので「おめでとう! ・・・あ、悔しい(後藤にかわされて)かな?」と聞くと、苦笑いしていた。21秒 台が出なかった事とあわせて県での奮起を期待しよう。応援団も「かすこうお疲れー !」とエールを送って、意気揚々。1.2.3位を決めたこの時点で我が校は逆転 し、マイルで勝てば総合優勝という、「最高の舞台」は整った。 ★ 1600mRと閉会式 マイルは何があるか分からない。バトンの落下もあるし、コース外れて失格だってあ る。そうなれば総合優勝もない。・・・そんな年寄りくさい心配をよそに、後輩たち は「疾風のように」駆け抜けてくれた。石川、高橋、伊藤、奥岡が3分24秒92で ゴール。この瞬間、26年ぶりの総合杯が帰ってきた。 めったにない事なので、私は閉会式を写真に残したかった。閉会式を見るのは、自身 の高校時代以来である。けっこう緊張する。並んでる高校生がずいぶんと幼な顔に見 えた。自分の歳のせいだと感じた。 第3代監督・竹村競技委員長(おおっ!)が総評を述べた。「んー、風に巻かれて記 録はよくなかったね。しかし!春日部高校の奥岡、それと混成の・・・(中略)・・ ・は良かった。毎年東部地区から全国でも活躍する選手が生まれている。その中で、 春日部高校の26年ぶり総合優勝!というのはすごい。君たち高校生が生まれるはる か前だ!・・・(中略)」 委員長の「総評」というより、ご自身の「特別な想い」「私的な喜び」という内容に 聞こえたのは私だけであろうか(私は一人スタンドでニヤニヤしてしまった事も書き 落としてはならない) ただ竹村さんが喜ぶのもストーリーがある。竹村さんも、高野前監督も大塚監督も、 もちろん東部は総合杯を獲得している。二代目小原監督の「黄金期」であった。しか し連覇が途絶えた1979年は、竹村さんが定時制教諭として春日部高校のコーチに 赴任した真っ最中だったと思う。コーチについていながら連覇が途絶えたまま198 2年に転勤、3年後自らも春日部高校の監督を勤めインターハイ入賞者は輩出した。 しかし我が校は「東部地区優勝」を今年まで奪還し得なかったのである。つまり「悲 願」であったため、感慨もひとしおだったのであろうと思う。 ★ 千葉インターハイへ発進 東部地区大会は様々な結果を生んだ。予想外に好発進だった者もいるだろうし、調整 段階で振るわなかった者もいるだろう。東部で引退を決めた3年生もいるはずだ。数 年間に及ぶみんなの頑張り、監督の苦慮の結果、総合杯も奪還できた。おめでとう。 さて、千葉インターハイへ向けてのギアの切り替えはできているだろうか。現役生 は、様々な人間の努力と数十年に一度の追い風に乗っていることを再認識しなければ ならない。全員で8月の節目まで頑張るのだ。自分がどのラウンドまで進んだかでは ない。陸上は個人競技だが、全員でアップを始めた瞬間から「チームプレイ」が始 まっている。誰にでも自分なりの仕事がある。インターハイまで出場できるのは部員 の一部に絞られてしまうだろうが、傍観者にまわってはいけない。「全員で参加」 し、気持ちを絶やしてはいけない。そういうチームであってこそ、代表選手は力を発 揮できるのだ。 そうしてシーズンを終えてこそ、胸を張って卒業し、堂々とOBとして酒を飲めばよ い。試合、合宿の失敗談で何十年も笑い飲める仲間を持てる幸運は、今をおいて無い のである。 筆・のもと歯科クリニック <<前へ 次へ>>