No.134 全国に挑む後輩たち8−2  「その輝き・閃光のごとし」


全国に挑む後輩たち8−2  「その輝き・閃光のごとし」

★ 「赤き閃光」走る 優勝候補は昨年のインターハイ2位の石塚選手(土浦三高)。 現在の全国高校ランクトップの選手。 スタート一線。後藤も前半方なので飛び出すが、さすがに石塚選手は速い。 この二人が断然ほかを引き離し、独走。食い下がる後藤だが、 残念ながら石塚選手の速さは一枚上だった。 1mの差をつけられてゴール。 石塚選手の速報は10秒41!!「おおーっ」スタンドの歓声。 なんと、後藤は10秒52の好記録で2位!!すごい記録が生まれた! 勝てなかったのは残念だが一躍全国ランク3位以内に躍り出た瞬間だった。 嵯峨根副会長の試合連絡を受けた岡野進一先輩が、開口一番にさけんだ。 「なに?!10秒52で勝てないのかっ!?・・・」 ★ 価値ある2位 大塚さんは言っていた。 「勝てなかったのは残念だが、いまの石塚選手には高校生では誰も勝てないだろう。 しかし後藤が10秒4の選手と競えたのは、大きな収穫だ。 彼が今までレースをした中で最も速い相手だ。 二ヵ月後、同じ競技場で同じ相手。インターハイの決勝のシュミレーションができた。」 しかし、私は速報を聞いて単純に驚いたのも事実。 まず一つ。まさか母校から10秒52!!が飛び出すとは・・・・ 二つ目。後藤の集中力、コンディショニング力。ここ一番で確実な結果を残す。 奥岡も同じで、やはりこの二人は決して大負けはしない。 これは強い選手に共通の特徴だ。同期の瀬上祐司もそうだった。 9位に終わった高校2年の愛知インターハイの決勝を除けば、 それ以外は必ず優勝を含み入賞している。県から全国まですべて。 ★ 奥岡の執念 後藤が準優勝を飾った約一時間後、春日部高校主将の奥岡の400mH決勝が始まった。 2年前のOB総会で、彼は新入生紹介時に「全国で入賞します!」と 宣言していたのを鮮明に思い出す。OBはことのほか喜んでいた。 関東では昨年すでに両ハードル入賞を決めている奥岡。 その後体調を崩し、インターハイは全力で臨めなかった。 しかし最終学年である今大会は「関東二冠」を狙っている。 奥岡は入学当時から成績を期待され奮闘してきた。 110mH全日本中学ファイナリストである。そして伊藤ら同級生は、 奥岡に追いつくよう頑張ってきたはずだ。 奥岡こそが今の春日部高校の起爆剤であったのはいうまでもない。 男子400mHがスタート!前半やや押さえ気味であるペースだが、 県大会の時のようなスタミナの不安は解消している。後半猛追して交わした! 「勝った!」 見事、0.02秒差の優勝であった! 春日部高校9年ぶりの「関東チャンピオン」誕生の瞬間。 96年の熊谷太郎400m制覇以来だ。 ★ 監督の400mR作戦とは? 大塚さんは南関東も含めて、多くの監督たちから言われる。 「え?春高が負けるはずないでしょ、4継(400mR)で」 「・・・・・」 まあ、それはそうだろう。県大会で100m200m制覇、全員入賞、 奥岡を入れて実質10秒台を4人かかえることになる。 アンカーには10秒5の後藤を配しているということは、 最後の直線での追い上げはあっても食われることは絶対にない。 全国でも。 ・ ・・しかし400mRはわからない。 予選も早速チーム新だったが、バトンはどんづまり。 このメンバーからして「脅威の40秒台」は狙えるだろうが、 引っ張るパスワークは八月の夏までお預けだ。 後藤の100m決勝を終えた後、注目の400mR決勝が始まった。 おそらくインターハイ準決勝のようなレースになる。 予選のようなバトンミスは出来ない。 しかし途中まで那須の高校が断然トップ!国学院栃木、埼玉栄が続く。 春高はさして伸びない。 「あっ!」 スタンドがどよめいた。トップの高校がバトンをしくじった! そのままゴールを割ったのは国学院栃木で優勝記録は41秒4台。 バトンパスは見事であったと言う。埼玉栄が続き、春高がゴール。 しかし我が校も「41秒85」をマーク。ついにリレーも春日部高校記録を更新した。 「やっと」出た悲願の41秒台。 全国20傑くらいだろうか?高校生としては立派なものだ。 しかし「41秒8台?もっといけるでしょう?」と 周囲から言われてしまう布陣であることも事実。 ・・・大塚監督からすれば、言いたいことをぐっとこらえていることだろう。 なぜなら県大会で春高の前を走った古豪・武南高校もオーバーゾーンで失格している。 100m高校最速の石塚選手を配する土浦三高も、 インターハイでも強力なライバルになると思われたがバトンミスで消えたのである。 400mRは怖い!春高も幾度もの辛酸をなめている。 だから大塚監督は危険を犯さないのだ。 私はそれで大正解だと思う。いくら持ちタイムが良くても 失格したら何の意味もないのだから。 通過してインターハイの切符を手中にすることが最大の目的だ。 まあ、私ら素人は黙って八月を見ていよう。関東は通過したのだから。 インターハイのファイナルに残るには41秒前半を要するだろう。 <<前へ 次へ>>