No.151 赤き疾風 それぞれの県大会


大阪夏の陣へ ★ 1、後輩諸君へ 五月中旬に開催される埼玉県大会は、どの選手にも大きな節目になる。 常識的に考えて「埼玉県大会」を通過するということは 「快挙」に値するレベルだと私は思う。 テレビでこそバラエティーに出てくるスポーツ選手は五輪や世界陸上代表だから、 世間一般には「県大会入賞」という価値が理解できないだろう。 しかし考えてみてほしい。 100mで11秒を切るということが、いかに驚異的であるのか・・・ 400mをたった50秒で走り抜けることがいかにすごいことか・・・。 そもそも、トラック一周を全力で走り抜けられる一般人が いったいどれほどいようか?(おそらく吐いて倒れてしまうだろう) 自分の身長の20cmも上を飛び越える高校生、 普通の人間ならおそらく200mも付いていけないスピードで、5Km走り抜ける17歳・・・ そんな怪物が集結し、上位6名の代表枠を命がけで奪い合うのが「県大会」なのだ。 したがって3年生諸君らは2年以上日々練習を重ね、競技会に出場して 研鑽してきただけで大きな収穫を得ていると思う。 東部大会の駒崎先輩(草加高校校長先生)の言葉にあったように、 個々の能力に差はあるが、その過程が大切なのだ。 課題は自分との戦いであると・・・・。 春高は陸上成績だけで強い中学生を獲得することはできない。 練習を強いることはないし、上下の無意味な軋轢(あつれき)関係もない。 つまり、3年生の諸君らは自分の意思で最終ラウンドまでやり遂げたのだから、 東部で敗退しようと、県で力尽きようと胸を張ればよい。」 我々OBも自分で経験しているのだから、それは十分理解している。 競技成績がよければもちろん次のラウンドへ応援を続けていくが、 結果の良し悪しで後輩を区別はしない。 それが春高陸上部が90年続いている所以(ゆえん)なのだ。 ★ 2、監督のプレッシャー 大塚監督の部報を拝見して「なるほど・・・」とあらためて心労を共感できた。 全日本中学選手権の奥岡と、チャンプ後藤を配し予想にたがわぬ活躍を見せた昨年。 全国的に「埼玉の春日部高校」の名が再燃した結果、二年目の今年は? ・ ・・の注目度は俄然強まる。マスメディアの取材も増える。 無心のチャレンジャーであった昨年とは逆の立場になった。 NHKでインターハイと国体と放送された後藤の男子100mは いやがうえにも注目され、マークされているだろう。 監督のプレッシャーは我々外野には計り知れないものがあるはず。 3、★400mRの「我慢」 今年は寒い。東部大会では私は春高の赤いロングコートをはおって応援した。 5月中旬をすぎても寒い。この時期に診療室で暖房をつける日が多いのは、人生で初めてかもしれない。 「五月晴れ」には程遠い気候の中、埼玉県インターハイ予選は開催された。 そんな気温では、当然心配されるのが短距離陣の肉離れである。 幸いにも、多少の違和感は付いて回るも大きな故障は避けられた。 短距離陣の昨年の教訓は、個人はここ一番に記録にばらつきがないように、 そしてリレーは8月までは順位は二の次、必ずつなぐこと・・・である。 特に後藤を有するリレーは、全国から注目されている。 好記録をマークしても、「なんでそのメンバーならもっといくでしょ?」と雑音が入るだろう。 しかし、大塚監督の策が最善であることを昨年証明された。 「世間の冷やかし」に載せられて危険な記録狙いバトンにいくと、本来の目的に達しないのだ。 神業的なバトンパスは、8月3日の午後5時、つまりインターハイの準決勝で初めて挑戦すればよい。甘い罠に誘われてはいけない。 私はみなさんに是非あの感動的なシーンを見ていただきたい。 日が沈んだカクテル照明の中、全国数万はある高校のトップ8が決定するのだ。 極限の緊張感の中、我が若き後輩たちは大阪高校や成田高校、市立船橋・・ら モンスター校と互角に戦うのだから。 見ていて震えないわけがない。 嵯峨根さんも、私も感涙した。 監督も然り。 それくらいの偉業なのだ。 今年も監督がぐっとこらえるシーズンが続くだろう。 しかし、関東の優勝タイトルより、インターハイへ進むことが最優先だ。 県大会400mRは、準決勝ですでに41秒8をマークして、決勝は他を寄せ付けずにコンマ7秒もの大差で圧勝した。昨年より出足は良い。逆に安心しないでほしいくらいだ。心の緩みは危険だ。 男子400mR決勝 決勝 1着 5レーン チーム名 春日部   41.59   1 119 山崎 雄太 (3) 2 101 田中 俊 (3) 3 91 石川 謙一 (3) 4 111 後藤 乃毅(3)

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