No.154 赤き疾風 満身創痍  雨中の後輩達


大阪インターハイへの最終関門が終わった今、 書きまとめねばならない事が私の中には多々ある。 ★ 前哨戦を戦い尽くした若き3人に我々が思うこと あらかじめ記述したいが、赤き疾風は今年で終えようと思っている。 我々OBが「強い後輩だけが好き」と誤解されたくないからである。 そして、年端も行かない17歳足らずの子供達に 無駄なプレッシャーを与えたくないからだ。 私は自分が三流選手であって、ある意味良かったと思うことが、 実はこの歳になってままある。 一流の選手には憧れるが、めったに負けることを許されない (自分自身への)辛さが「強い選手」にはきっとあると思う。 周囲からは、「勝って当たり前」負ければ「なあんだ・・」と落胆される。 才能も凡人よりはあるかもしれないが、間違いなく「努力の蓄積」で 勝ち上がってきたはずだ。(強い仲間を見てきた経験では、みなそうだと思う。) しかし、いかにも涼しげにこなしてきたように周囲は見ている。 私は、「弱者の気持ち」は痛いほどよく分かる。 少数の勝ち残った精鋭たちを遠くに見ながら 「自分もそこそこ頑張ったんだけどなあ・・・」と思いつつも、 現実を受け入れるときが、東部や、県でやってくる。 また、どんなに強い選手も、いつかは経験する。 まれに勝ち続けたとしても、年齢と共に引退は必ずやって来る。 駒崎先輩の話に戻るが、挫折をどう受け止めるかということ。 スポーツに限らず、進学、社会人へと進む中で、 これは常に付きまとう重要な問題なのだ。 ★ 張り詰めた3人 記録速報は前日の400mR優勝を伝え、我々は歓喜した。 とくに嵯峨根さんはひとしおであったろう。 「春高27年ぶりの関東制覇。」 新聞にも掲載された。 嵯峨根さんは、今の後藤と同じように、 自身が決勝のテープを切った感触を思い出していたかもしれない。 また、風の舞う等々力は、多くのハプニングを呼んだ。 インターハイでは春高の対抗馬と目された南関東勢も、 いくつか姿を消した。シビアな戦いだ。 決してランキングの通りにはいかない。 これが関東大会なのである。 そのシビアさは400mRとは逆に、春高の個人種目にも現れた。 向かい風3mに、三日目は降雨。南北共に記録はよくなかった。 というより故障者を増発する結果となったようだ。 予選トップ通過した選手が決勝では最下位に沈んだり、 インターハイ優勝候補が出場を取りやめたりと波乱を呼んだ。 結果はご存知のように、100m後藤が優勝、田中も5位。 200mは三人決勝に残り、田中は21秒台に突入し2位。 後藤6位、石川7位。 田中の成長、好調さが際立った試合であったと思う。 後藤、石川は疲労困憊で、200m決勝あとに倒れこんでしまった。 関東の勝負の厳しさを如実に物語っている。 200mで三人決勝に毅然と立つ赤シャツを見て、 スタンドからはどよめきが起こった。 「・・!うわっ・・・」 「すっげえ、・・春日部・・全員残ってきたよ・・・・」 我が高の三人の詳細を、私がおこがましく語るのは辞めておきたい。 足掛け3年の全国に挑んできた後輩達は、 総まとめの大阪への道を立派につなぎ、満身創痍であり、 何位に終わろうと立派におのおの結果を残してきたからだ。 とくに私は、今回の主将石川にエールを贈りたい。 奥岡ら先輩のもとに、同期を支えチームを立て直して頑張ってきた。 東部編で書いたように「(奥岡から)代わって弱くなった」と言われまいと、 懸命にがんばった。県新人での200m優勝コメント 「赤い疾風を自分の代で途切れさせてはならない!」 と語っていたことからも、覚悟の程がうかがえる。 結果だけみれば200mでインターハイ出場はならなかったが、 石川は「ものすごく強いスプリンター」であることは間違いない。 100m11秒、200m22秒の脚を持つエースである。 後藤が頑張っているので、数字的に二番手に見えるが、 他高校に行けば「切り札」的エーススプリンターである。 100m200m埼玉県を勝ち抜けた選手であり、 さらにはロングスプリントの適正も備えた逸材だ。 春高OB900人の中でも、 石川より速い人間はたった3名しか存在しない。 将来は200m400mでの活躍も期待している。 ・ ・・後藤の関東高校男子100m優勝。 私の知る限りもっとも最近関東を制覇したのは44年も前の事である。 後藤の優勝は、梶 博信先輩以来の快挙であった。 春高90年の挑戦でも、稀だということ。 幾多の個人タイトルを獲得した屈強なる先輩の中でも、 「100m関東最速」の称号は、それほど難しいのである。 第15回関東高校対抗選手権大会(1962年) 100  @ 11.4 梶  博信 200 C 23.6 梶  博信 走幅跳 B 6.86 梶  博信 走幅跳 D 6.58 寺尾 幸村 三段跳 @ 14.21 田村  昂 棒高跳 @ 3.90 田村  昂 砲丸投 D 12.83 金沢 幸夫 円盤投 A 39.71 田村  昂 保投 B 48.00 金沢 幸夫 5種競技 C 2707 寺尾 幸村 5種競技 E 2628 新島 宣起 第15回全国高校対抗選手権大会 棒高跳 E 3.70 田村  昂 その2へ 37回  のもと歯科クリニック

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