No.186    絶対破られない世界記録 1


絶対破られない世界記録 1 ★ 薬物と世界記録 1990年ころの東欧、共産圏の変化で国家的スポーツ事業は急変した。 ソビエト連邦や東ドイツの国家陸上は崩壊し、ドーピング問題が表面化してきた。 マスコミ的には1988年のソウル五輪のベンジョンソンが最も有名だが、 時を同じくして様々なスポーツへの薬物の浸透が露呈されてきた時期でもあった。 スタノゾロなどのステロイド(副腎皮質)ホルモンや男性ホルモンなどが 陸上に大きく関わっていることが白日の下とされ、世界記録の見直しを迫られた。 テレビではこぞって薬物使用後の東欧の選手の病気状態をドキュメントした。 乳房がでてしまった男性や、男性の声になってしまった女子選手。 元来、身体から微量には分泌されるホルモン。 これを人為的に過剰に注入して、一時的な効果(筋肉増強)を狙ってのものであった。 その結果、人体からは分泌されなくなってしまい、大きな副作用として発病する。 スーパーマンのような快走を見せた選手が、車椅子でしか移動できなくなったりもする。 私もかつて皮膚科医に「のもと先生、これステロイドですが、炎症鎮めるために短期使いましょう」 と、すすめられたことがある。 結果、顕著に炎症は回復を見せた。効果は抜群。 肌はつややかになり、疲れにくくなった。身体が10歳若がえったように感じるほどであった。 ・ ・・しかし、治療が終了し服用をやめたとたん、急にぐったり・・・ 皮膚炎は治ったのだが、疲労感は従来より増した気がするほど激変した。 「これがリバウンドか・・・」 内服薬に身体が頼ってしまい、分泌をためらっているのだ。 まさに「諸刃の剣」・・・魔の薬である。 名誉や富がかかっている選手が、疲れが取れ筋力もアップして戦跡も向上・・・・とくれば、この悪魔の誘惑に勝てないのだろう。 現在はプロスポーツでも禁止されているが、それでも野球やらグレイゾーンな選手は多々いる。 陸上ではパワーの短距離、投擲のステロイドばかりではない。 長距離では「赤血球」を多量に作り出せるホルモン「エリスロポエチン=通称エポ」もある。 しかしツールドフランスなどのメジャー自転車レースで死者まで出した。 世界的陸上選手にインタビューした驚くべき結果がある。 質問は、「もし世界記録や金メダルをとれるなら、ドーピングするか?」 ・・・一番多かった返答は「イエス」である。 全世界の陸上選手は、それくらい世界タイトルに対する憧れは強いのだ。 ソウル五輪のベンジョンソンと同じレースで、欧州の選手も実は陽性反応がでている。 「風邪薬だ。にんじん茶を飲んだ!」・・・で通ってしまったらしいのだが、 これはアメリカ側主導の体制に問題があったのかもしれない。 五輪、世界陸上、世界記録保持者であったガトリンは抹消され、ギリシャのケデリス、 アメリカのケリーホワイトら世界チャンピオンのタイトルもことごとく剥奪された。 東京世界陸上の100m200m二冠であったカトリンクラッペも追放された。 ハンマー投げの薬物乱用も、室伏選手の抗議で厳格にジャッジされた。 おそらく日常的に蔓延していたのであろう。 検査の公平度もまちまちであるようだ。これも現実。 ★ 絶対やぶられない世界記録 そういった過去の社会背景、国家の絡みは別にしても、絶対に超えられないとされる世界記録がある。 女子100m10秒49 Fジョイナー 女子400m47秒60 Mコッホ 100mはマリオン・ジョーンズが迫っていたが、度重なるスキャンダルで事実上消滅した。 バルサミコ社の「健康食品」をとっていたことも明らかになった。 その健康食品とステロイドがイコールと断言されたわけではないのだが・・・。 ジョイナーも1988年だけ記録が飛躍的に向上したので、 10秒台の先駆けとなったアシュフォードさえ「あれ(10秒49)は男性しか出せない記録」と言い切っている。 ドーピングが最後まで疑問視され、おまけに心筋梗塞の突然死では残念だが疑惑は深まるばかりとなった。 女子・世界歴代10傑 位 タイム 名前 所属 日付 1 10秒49  フローレンス・ジョイナー  アメリカ合衆国  1988年7月16日 2 10秒65  マリオン・ジョーンズ    アメリカ合衆国  1998年9月12日 3 10秒73  クリスティーン・アーロン  フランス     1998年8月19日 4 10秒74  マリーン・オッティ     ジャマイカ    1996年9月7日 5 10秒76  エベリン・アシュフォード  アメリカ合衆国  1984年8月22日 6 10秒77  イリーナ・プリワロワ    ロシア      1994年7月6日 6 10秒77  I・ラロワ         ブルガリア    2004年6月19日 8 10秒78  D・ソーウェル       アメリカ合衆国  1989年6月3日 9 10秒79  李雪梅           中国       1997年10月18日 9 10秒79  インガー・ミラー      アメリカ合衆国  1999年8月22日 女子・ジュニア世界歴代10傑 位 タイム 名前 所属 日付 1 10秒88  マーリンス・エルスナー   東ドイツ     1977年7月1日 2 10秒89  カトリン・クラッベ     東ドイツ     1988年7月20日 3 11秒03  シルク・グラディッシュ・メラー 東ドイツ   1983年6月8日 4 11秒04  アンジェラ・ウィリアムス  アメリカ合衆国  1999年6月5日 5 11秒08  ブレンダ・モアヘッド    アメリカ合衆国  1976年6月21日 6 11秒11  シェイクディア・ジョーンズ アメリカ合衆国  1998年5月2日 6 11秒11  ジョアン・ウダックイーカー ナイジェリア   1999年7月2日 8 11秒12  ベロニカ・キャンベル    ジャマイカ    2000年10月18日 8 11秒12  アレクサンドリア・アンダーソン アメリカ合衆国 2006年6月22日 10 11秒13  チャンドラ・チーズボロー  アメリカ合衆国  1976年6月21日 10 11秒13  グリット・ブリューアー   ドイツ      1990年6月6日 10 11秒13  アシュリー・オーエンス   アメリカ合衆国  2004年7月14日 筆 のもと歯科  2へ続く

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