Nomotoさんのお話 No.95 春高記録物語Ⅰ嵯峨根裕之さん2

No.95　春高記録物語Ⅰ　　嵯峨根裕之さん2

春高記録物語Ⅰ　　嵯峨根裕之さん2

★滋賀インターハイの衝撃春高はまず４００mRが勝負であった。４００mR予選は余裕でトップ通過。しかしその後に、真夏のインターハイ特有の夕立ちがやってきた。ここで流れが変わった。競技は一時中断を余儀無くされ、競技進行は大幅に遅れる事になった。雨雲に日射しは遮られ、夕刻も迫りあたりはさらに暗くなった。いよいよ準決勝３組だが、みな列強の有名校ばかりだ。ここまで来ると持ちタイムに大差ない。スタートを切った猛者達は、だんご状態で競り合ってくる。いよいよ関根さんのコーナーワークから、アンカー嵯峨根さんへのパス。春高は７レーン。直線の加速走なら全国のスプリンタ－にだってひけは取らない。内側の宮崎工業と、清水商業が前を行く。３番手くらいでゾーンに入った瞬間、悲劇は起きた。「ああっ！」スタンドから悲鳴が上がる。・・・バトンは渡らなかった。関根さんからバトンが届かず転倒。嵯峨根さんは止まってしまった。・・・いったい何が起きたのか・・・・ ★本人が語る２５年目の真実様々な布石があった。先述したような雷雲と時間の遅延による暗さ。後で嵯峨根さんの視力に支障が出たとの推察もあったが、これは間違いである。嵯峨根さんが眼鏡をかけたのはその半年後の受験期。したがって夏の段階では眼鏡を要するほどでは無かったのである。嵯峨根さん曰く、「周囲につられたんだ・・・」と語る。つまりアンカーの段階まで競り合って、横に複数のチームが並んで来たのに焦ったのだという。インターハイ準決勝を走るチームのアンカー達である。一流の加速走と集中力を極限まで高めていたであろう。ほぼ全員が秒速１０mのスピードであるから、たった２/１００秒でも２０cmのズレということになる。わずか百分の数秒だが早くスタートしてしまい、関根さんのバトンは届かなかった・・。正確に言うと春高は「途中棄権」である。関根さんはゾーン内でバトンが渡らず嵯峨根さんがゴールしなかったため「棄権扱い」　、オーバーゾーン失格ではないのだ（陸マガ参照）。魔の３組は連鎖した。実は福岡八女工業、宮崎工業といった超名門も、同じ組で「失格」という憂き目にあっているのだ。怪物高校生の集まるインターハイに潜む魔物が、悪戯をしたのかもしれない。レース後一時間経っても帰って来ない選手達。小原監督も「竹村みてこいよ・・・」と心配をかくせずに指示を出す。・・・関根さんは大泣きしていた。みんな押し黙って下を向いている。・・・バトンミスは誰のせいでもないのは陸上界の常識である。しかし嵯峨根さんは痛切に責任を感じていた。２年前も優勝候補であった１６００mR で失格を受けている春高。またか・・・監督の気持ちも揺らいだ事であろう。「お前の幅だけでも頑張ってくれ・・」と小原監督。この時、嵯峨根さんの闘志に火がついた。 ★大木さんを超えた記録是が非でも入賞を！・・・本来、リレーで表彰台に登り、仲間と喜びを分かち合うはずだったインターハイ。幅跳びは「副業」のはずだったが、あまりの不運に打ちのめされている仲間のためにも、頑張らねばならない。このいインターハイを「全敗」で帰るわけにはいかない！幅跳び歴たった４ヶ月だが、そんな事は言っていられない「窮地」である。嵯峨根さんのプレッシャーはプラスに働いた。予選通過の７m０５cmを大きくこえる７m２１cmをマーク！何と１８年ぶりに大木さんの春高記録もあっさり更新してしまったのだ。予選でマークした好記録。このままの記録が残らないのかな・・・と念じたものの、インターハイは決勝で仕切り直しだ。予選で高校記録をマークしても決勝には影響はしないのはトラック種目とて同じ事。しかし小原監督は本人以上に驚いただろう。「もしかしたら・・・」チームに一筋の光明が差し込んだ。 ★運命の２本目せめて予選の７m２１cmは超えたい！気合いの入った一本目はファール。やはり経験の浅さが問題か・・・しかし２本目に突然それは起こった。ドンピシャのタイミングで踏み切り板にミート！「７m３０cm」白旗があがる。風は追い風２mジャスト。堂々の３位に躍り出たのだ！！本人も春高も大興奮だ！！ランキング１５位から一気に３位表彰圏内へ躍進。このまま勢いに乗ってさらに記録更新もしたいし、あわよくばみんなに抜かれたく無い！というのが心情であろう。３本目はファール。実はこの日は２m以上の風が舞っていたのだ。陸マガを見ると+５mから-２mまでの気まぐれな風向。１ｃｍを争う幅跳び泣かせである。これでは踏み切りは合わせにくい。嵯峨根さんは４本目に何とか脚を合わせたものの６m７０に留まる。上位３人もファールが続き、結局最初の２本目のまま、順位は決まってしまった。嵯峨根さんは６本のうち、４本ファール。余談だが４位の新潟の選手は、７m２５cm以上を２回も跳び、ほとんどが７m２０付近の案程度を保ったものの残念ながら表彰台と、海外派遣を逃してしまった。筆　のもと歯科 <<前の記事へ次の記事へ>>

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