Nomotoさんのお話 No.96　春高記録物語Ⅰ　　嵯峨根裕之さん3

No.96　春高記録物語Ⅰ　　嵯峨根裕之さん3

春高記録物語Ⅰ　嵯峨根裕之さん3

★海外遠征インターハイ上位２名が日米大会に出場、３位の選手が日韓に召集された。しかし嵯峨根さんはためらっていた。それは４００mRの事に起因する。この後に控えた夏の埼玉県大会（私らの頃まで国体一次大会と呼ばれていた）で、総合優勝と４００mRの４１秒台を目指したい！という願望があったのだ。自分は入賞できたが、３人の仲間に気兼ねもあったのであろう。４人で走る最後の機会だ、夢の記録に挑みたい。しかし小原監督は言った。「お前は遠征に行け。きちんとした結果で選出されたんだから出なきゃいかん。」確かに県大会なら、嵯峨根さんの跳躍３種目とリレーの優勝があれば総合優勝は圏内であろう。それは監督にとっても名誉な事だ。しかし高校時代の海外遠征や、様々な外部の人間とのかかわりは、大きな人生教訓を生む。嵯峨根さん個人にとって、それが「大きな財産」である事も、小原監督は容易に察していたはずである。何しろ実力で勝ち得た参加資格なのだから。嵯峨根さんはソウルへと飛んだ。 ★国体、受験ソウルでは２戦し、７mジャンプを見せ１勝できた。やはり異文化コミュニケーションは良い経験になったという。高校生はお互いに興味津々、夜間は自然に親睦会になった。そこで一番感心したのは、韓国の高校生は英語がみな流暢にしゃべれるのだ。これには面喰らってしまった。単語や文法は日本ではそれなりに暗記しているはずだが、英会話が必修で第２外国語まで学習しているとなると太刀打ちできない。まあ政治や歴史背景が異なるので、どっちが良い悪いの比較はできないのだが。日本の英語教育に自信を失ったと言う。埼玉の国体代表である嵯峨根さんは、宮崎へ渡った。これがなんと宮崎名物「台風国体」となってしまったのだ。のきなみ競技は中止、延期。一応参加はしたものの、踏み切り板の粘土部分が風で吹き飛ぶような環境で記録は好記録は残せなかった。大会の華は高校２年生ですでに１１秒７３の女子日本記録をマークしていた宮崎工業の阿萬亜里沙選手。１５０cmの小柄な女性だが抜群のダッシュを誇り、インターハイに続き連覇達成。地元のヒロインとなった。埼玉選手団は地元優勝の宮崎に次いで総合２位。しかし、帰りはなんと飛行機でなく夜行列車だったらしい！さぞ長い帰路だったろう・・・４ヶ月後早大へ進学し競争部へ入る。しかし違う目標を見つけて自主退学。翌年受験し直し、早大法学部への再入学となった。在学中も春高に来て下さっていた。私とは学年は重なっていないが、砂場に来て声をかけて頂いた事がある。もちろん「なんちゃって跳躍班長」である私の事は知られていないが、私は「へえー、７m３０も跳んだ先輩なんだあ・・・すごいなあ・・・」と思いながら話していた。４００mRの事件に関しては、すでに皆川さんか大塚さんあたりに聞かされていたので知っていた。しかし春高らしく、えらく大げさな話に飾りたてられていたのは言うまでもない。（私がもっと誇張して、後輩に語り継いだのはもちろんである）嵯峨根さんの大学卒後は、全国的規模の巨大企業に就職のため栄転を余儀無くされ (社会人最初の赴任先は山口県岩国市)、やっと岩槻に戻っていらしたのは数年前である。 ★もしも嵯峨根さんは「純真に競技をやりたかった。」と語る。学生選手権などの参加ができない（学生連盟に加入していない）ため、競技中心の学生生活というわけにはいかなかった。したがって嵯峨根さんは生涯一度も専門家の指導を受けていないのである。言わずと知れた「春高流」の練習で跳んだ７m３０cm。いわば「自己流（？）」で関東、全国、海外のいずれでも悠々７m超えをしているのだから。もし・・・最高の環境で技術指導を受け、存分にこの競技に堪能できたなら・・・やはりそれなりの結果（五輪標準が見えるくらいの・・・）は期待できたのではないだろうか・・・。いずれにせよ、春高陸上部最強のロングジャンパーであるのは間違い無い。インターハイの決勝で、自己最高記録をマークして表彰台に立つ事ができる。これが高校で陸上をやる全ての者の目標ではないだろうか。だから大木伸男、嵯峨根裕之を目指して後輩達は、日々練習するのだ。筆　のもと歯科 2004/02/20 <<前の記事へ次の記事へ>>

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