Nomotoさんのお話98

No.98　春高記録物語Ⅱ　　　大木伸夫さん1

春高記録物語Ⅱ　　　大木伸夫さん1

あるOB総会での一場面。私は緊張しながらある大先輩と話をしていた。「ほう、今のグラウンドはゴム製なの？へえ。」「だから先輩が、高校時代に現在の条件で跳んでたら、１６ｍくらい行ってますよ！助走スピードも弾み方もまるで違いますから。」「ははは。そんなに変わらないと思うよ。でもゴム製なら滑らないし、スパイクも泥だらけにならなくていいなあ(笑）」親の歳ほども離れた人だが、間違いなくインターハイを幅、三段で制覇した大選手である。 ★大木　伸夫さん━━━━━━━━━━━━━━━━━ インターハイ2冠は春高史上ただひとり。インターハイ大会記録を10年以上保つ。しかもただの２種目制覇ではない、内容が特筆モノであったのだ。昭和３６（１９６１）年8月4日の新聞記事より・・・「午後２時、インターハイ静岡草薙競技場は、ある選手の跳躍に観衆が釘付けになった。１本目からインターハイ大会記録を、大きく跳び越えてしまったからだ。そして3本目、ついに数十ｃｍ先に着地！高校記録に肉迫する１５m５１をマーク。公認記録（追風２m以内）も１５m３８の高校歴代２位を記録して安定感を示した。」　問題の焦点は、高校生がなんと「五輪標準記録を越えてしまった事」と、これが４０年以上前の試合である事。東京五輪でテレビが売れたのは１９６５年であるから、白黒のテレビすら普及ままならない１９６１年は、いわゆる「戦後わずか１５年」なのである。 ★もし全天候トラックだったら━━━━━━━━━━━━━━━━━ 栄養状態すら管理できない時代、分厚く重いスパイクとユニフォーム、でこぼこのグラウンド。今現在とは比べるべくもない。特に三段跳びにおいてゴム製トラックの有利さは、図り知れない。土と異なり、助走スピードからは飛躍的に向上し幅で３０cm、三段跳びでは７０ｃm近くの差が生ずるかもしれない。そんな土のグラウンドの中にマークされたこの大記録は、大きな価値を持つ。もちろんナイター施設等あるはずもない春日部高校グランドで、真っ暗になるまで努力研鑽を積んだ結果であるだろう。 ★才能とは━━━━━━━━━━━━━━━━━ われわれ凡人が、「どうせあの人は才能があるから・・」と負け惜しみを言うのなら、せめてその選手と、同じくらいの努力をした上でなければいけないだろう。全国入賞をする選手は、想像を絶するトレーニングをわが身に課しているのである。近年のインターハイでも練習方法やグラウンド条件で圧倒的に有利なはずだが、今も１５m５０を越えての優勝は難しい。昨年のインターハイは１５ｍ１６で優勝。しかも１５ｍ台はたった二人という状態。記録だけの比較はナンセンスなのはわかっているが、別の意味で日本の三段跳びの将来が心配である。インターハイ大会記録を数十センチ更新・・・・時代の平均を大きく超越してしまう事が、陸上にはある。その後ゴム製トラックになるまで、１０年以上も大会記録として輝きつづける事となった。栄光の2冠にいたる経緯は？幅跳びのハプニングとは？詳細をご本人から直接聞けるチャンスに恵まれた筆　のもと歯科　(2004/03/09) <<前の記事へ次の記事へ>>

No.98 春高記録物語Ⅱ 大木伸夫さん1

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