Nomotoさんのお話99

No.99　春高記録物語Ⅱ　　大木伸夫さん2

春高記録物語Ⅱ　　大木伸夫さん2

★「どしゃぶり」幅跳びのエピソード━━━━━━━━━━━━━━━━━ 先述したように、大木さんの三段跳びは高校陸上史に語り継がれるものである。しかし初日の幅跳び優勝記録は６ｍ９２。大木さんの自己記録７ｍ２０を大きく下回るものであったので気になった。優勝しているのだから、全員が共通する悪コンディションがあったのは間違いなかろうと。「いやあひどい雨だったよ・・・」と大木さんは語ってくれた。案の定、大雨どしゃ降りの中で静岡インターハイの幅跳び決勝はスタートしたのだ。大木さんは「こりゃあ一本目が勝負だな！」と作戦を決めたという。そして見事に初回に最高記録をマークし、そのまま逃げ切り優勝！大木さんの予想通り、他の選手は様子を見るはずだった一本目で先行され、あせったという。みな警戒しあっているうちに、どんどん走路は泥がぬかるんで足を取られた。踏み切りも全くあわなかったであろう。まさに先行逃げ切りの作戦勝ちである。しかしここは全国の猛者が集うインターハイである。みな実力伯仲であり、同じ条件である。やはり勝負強さと集中力が秀でていた結果であると言える。もうひとつ私が感じたのは、好天で実力が発揮された三段跳びの結果からして、幅跳びも好条件でのトライができていれば・・・。おそらく高校記録更新のチャンスも訪れたのではなかったか・・・気象条件はいかんともしがたいが、残念な話だ。 ★２００３年の秋、上尾にて━━━━━━━━━━━━━━━━━ 休診日に東部地区新人戦の応援に行った。今年はハードル新鋭の奥岡が活躍し、チームも盛り上がった。最終日であったのでマイルも東高とのデッドヒートを繰り返していた。さて男子三段跳びでも、後輩が１３ｍを越え健闘していた。ふとピットを見るとなんと大木さんが観戦していらっしゃるではないか！「これはチャンス！」と私はいつものように図々しく挨拶に行った。大木さんの高校時代は、上尾はまだアンツーカであった。ピットの位置は昔とどう違うかはわからないが、目の前では元気な子供たちが頑張っている。高校生たちは、ここに１５ｍ５１（追参・優勝記録）を跳んでインターハイ2冠を獲った人物が観戦している事、ましてその人物が、長らく埼玉県高校記録保持者であったことや、どこの高校であるかなどもちろん知るはずもないのだろう。自分の親よりもはるかに年配だ。一応現役後輩にも話はした。今はピンとこなくとも、いずれ母校の歴史を知り、「あの人が！」と思い出してくれるだろう。また「春高黄金期の語り手」が時代とともに減ってきているのも事実。現役の彼らがいずれ卒業して、このページを見て、コラムを介して先人たちの活躍を知ってくれることを望む。優れた歴史は紛れもなく事実であり、それを成し遂げたのはわたしらの先輩であるのだから。 ★大木さんの１００ｍ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 昔の貴重な話を聞けるチャンスに恵まれたので、いろいろ聞いてみた。一番知りたかったのは１００ｍがどれくらいだったのかということ。私の認識からいうと、幅跳び７ｍ超えには11秒０のスピードが必要かと推測する。「いやあ、実際には覚えていないけどさ・・・」遠い記憶を探りながら話してくれた。春高は先輩が厳しくてさ、ずいぶん走らされたんだよ。○○先輩なんか怖くてさあ（笑）。おかげで最終的にはだいぶ速くなったなあ。他校の国体１００ｍ代表にも勝ったことあるし・・・」即座に私は思った。「確かにそうだ。インターハイでダントツ優勝できるんだから、バネだけで跳べる距離ではない。嵯峨根さんがそうであったように、短距離のトップ並みに走れるはず・・・」ふと探究心に駆られた私は、膨大な資料から当時の記録をサーチした。・・・・驚くべき結果であった。筆　のもと歯科 (2004/03/09) <<前の記事へ次の記事へ>>

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